京都の映画館MOVIX京都で、ウ・ミンホ監督の「ハルビン」を鑑賞。MOVIX京都は新京極商店街という、大きな商店街の中にある映画館だ。商店街のHPによると、明治新政府の上知令によって、寺社領が一般に供されたところに商店街ができたという。現在も7つの寺と1つの神社のある、珍しい商店街だ。
明治期には芝居小屋、寄席などの劇場が集まり、エンターテイメントストリートとして発展してきたという。現在も映画館のほか、「ろっくんプラザ」という屋外型イベントスペースがあり、地域の伝統行事や地元のアーティストによる様々なイベントが行われている。私が行ったのは平日の昼間でイベントは行われていなかったが、ススメやハト、カラスが水路で猛暑をしのいでいた。
さて、「ハルビン」は独立運動家の安重根が、1909年にハルビン駅で韓国統監府の初代統監・伊藤博文を暗殺した事件を題材としている。安重根を人気俳優のヒョンビン、伊藤博文を日本の俳優リリー・フランキーが演じたことで話題になった。リリー・フランキーは是枝裕和監督の「万引き家族」に出演したことなどで、韓国でも人気があるそうだ。
安重根が伊藤博文を暗殺し、処刑されたことは史実なので結末がどうなるかは初めからわかっている。映画はしかし、安重根を民族的英雄として描くのではなく、様々な葛藤や弱さを持つ個人として描いている。その上で現在の不安定な社会状況と重ね合わせ、観客一人一人に自ら考え行動することを促すような終わり方をする。
この映画が韓国で公開されたのは2024年12月24日。この3週間前に尹錫悦大統領が非常戒厳を宣布している(翌日、国会で解除要求決議案が可決され、非常戒厳は解除)これに危機感を抱いた市民たちが大統領の弾劾と罷免を求め、デモを行っていたさなかのことだ。映画の中に、伊藤博文の「この国の民は国難の度に変な力を発揮する」というセリフがあるが、まさに「力」が発揮されていたわけである。
ところで個人的には、この映画が日本全国のシネコンで公開されていることに、ちょっと感慨を覚えている。これまで植民地時代を舞台にした韓国映画が日本で公開されると、実態はどうあれ「反日映画」などと攻撃されることが多かった。
例えば、2018年2月に日本公開された、イ・ジュンイク監督の「金子文子と朴烈」は当初、映画祭ならともかく、一般の劇場での公開は難しいと言われていた。皇太子(のちの昭和天皇)の暗殺を企てた二人が主人公だからだ。だが、実際に公開してみると映画は好評で、ミニシアターを中心に上映館が次々と増え、私の住む福岡のKBCシネマでも上映期間を延長して公開していた。
関係者のご苦労ご尽力もあったかと思うが、伊藤博文暗殺事件を題材とした「ハルビン」が堂々と公開されていることを、好ましく思っている。

