旅と映画

行ったところと観た映画の個人的な記録

2021-01-01から1年間の記事一覧

大逆土佐日記7.[幸徳秋水生家跡]

幸徳秋水、坂本清馬の墓を訪ねた後、「幸徳秋水を顕彰する会」のTさんにさらに中村の町をご案内いただいた。まずは安岡良亮の屋敷跡。良亮は熊本の初代県令(県知事)で土佐藩の出身。幕末期に幡多勤王党を組織し活躍、維新後には明治新政府に仕えた。1873…

大逆土佐日記6.[幸徳秋水、坂本清馬の墓]

「幸徳秋水非戦の碑」が建立された正福寺には、秋水と坂本清馬の墓がある。清馬は大逆事件により、20年以上を獄中で過ごさなければならなかった人物だ。秋水と同じ高知県の生まれであり、父親は秋水と同郷の中村出身だ。 清馬の父は腕のいい紺屋の職人であっ…

大逆土佐日記5.[幸徳秋水非戦の碑と顕彰する人々の意志]

幸徳秋水絶筆碑の後は、いよいよ11月3日に除幕式が行われたばかりの「幸徳秋水非戦の碑」を訪ねた。 非戦の碑の建立は幸徳秋水生誕150年記念事業として、「幸徳秋水を顕彰する会」が取り組んできたものだ。絶筆碑に続く2つ目の記念碑で、秋水が1911年の刑…

大逆土佐日記4.[幸徳秋水絶筆碑]

為松公園にある「幸徳秋水絶筆碑」は、秋水刑死70周年記念事業として、1983年に同実行委員会が建立した。絶筆は死刑を宣告された1911年1月18日に獄中で書かれたものだが、字が乱れることもなく堂々としている。以下の漢詩である。 區々成敗且休論 千古惟應…

大逆土佐日記3.[土佐の小京都・中村]

幸徳秋水の故郷・中村まではJR高知駅から特急で2時間弱。現地では「幸徳秋水を顕彰する会」のTさんにご案内をいただいた。 中村と書いているが、市町村名でいうと四万十市になる。2005年に旧中村市と旧西土佐村が合併され、四万十市になった。旧中村市は…

大逆土佐日記2.[兆民通りなど]

高知市について最初に向かったのは、高知市立自由民権記念館である。高知出身の首相・濱口雄幸没後90年の企画展が開催されているのだ。 JR高知駅から自由民権記念館までは路面電車で15分ほど。歩いても30分ちょっとで行ける距離だ。道がまっすぐで歩きやす…

大逆土佐日記1.[幸徳秋水の非戦の碑]

11月に高知県を訪ねることにしたのは、幸徳秋水を顕彰する会から「秋水非戦の碑」除幕式のお知らせをいただいたからだった。 この非戦の碑の建立は秋水生誕150年(刑死110年)の記念事業として行われたもので、私も少額ながら協力している。無事に碑が建立さ…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる10.[安田善次郎の墓]

旅行3日目は再び東京。今日が最終日であるが、飛行機の時間までもう少し東京を歩いてみることとした。 小雨が降る中向かったのは、大塚の護国寺にある安田善次郎の墓だ。朝日平吾の墓に行ったのだから、彼のテロの犠牲になった安田の墓にも行ってみようと思…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる9.[宮下太吉の墓]

宮下太吉は1875年、山梨県甲府市で生まれた。墓も甲府市内の光澤寺にある。小学校を出たのち、16歳で機械工見習いとなる。東京、大阪、神戸、名古屋などの工場を渡り歩き、愛知県亀崎の工場で働いていた1902年頃から社会主義に関心を持つようになった。 1908…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる8.[甲府へ]

旅行2日目。昨日は東京の本郷を歩いたが、今日は山梨県甲府市へ向かう。甲府へ行くのは2018年7月以来だ。今回の目的地は2つ。「山梨平和ミュージアム -石橋湛山記念館-」と、大逆事件で刑死した宮下太吉の墓である。 石橋湛山記念館は2018年2月に訪ね…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる7.[煩悶青年とテロリズム]

本郷の朝日平吾の下宿跡を訪ねた後、朝日の墓にも足を延ばしてみた。墓は大塚の西信寺にある。9月28日の命日の後だからか、花が供えられていた。私自身は超国家主義とその時代背景について関心があるから訪ねたのであり、朝日の思想や行動に何ら賛同・共感…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる6.[安田講堂、朝日平吾下宿跡]

本郷と言えば、東京大学である。今回行き先を本郷と定めたのも、まだ赤門を見たことがないからという単純な理由だった。 東京大学が明治新政府によって設立されたのは1877年。江戸幕府直轄の開成所と医学所が統合され、日本最初の官立大学として誕生した。有…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる5.[菊富士ホテル跡]

燕楽軒跡で和田久太郎に思いを馳せ、菊坂通りをゆるゆると下って向かうは菊富士ホテル跡である。 菊富士ホテルは1914年、本郷区菊坂に開業した。坂口安吾、谷崎潤一郎、宇野千代、広津和郎、正宗白鳥、直木三十五、竹久夢二、宮本百合子、湯浅芳子、三木清と…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる4.[福田雅太郎暗殺未遂現場跡]

和田久太郎と村木源次郎が、陸軍大将・福田雅太郎を暗殺しようとしたのは、1924年9月1日のことだった。関東大震災からちょうど一年後のこの日、福田は本郷区菊坂町の長泉寺で講演をする予定となっていた。講演会は在郷軍人会の主催で、福田は震災当時、戒…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる3.[平田篤胤と天狗小僧]

東京駅で浜口雄幸遭難現場を訪ねたら、御茶ノ水駅で下車。本郷が目的地なのに、御茶ノ水で降りたのには理由がある。湯島聖堂を横目に神田明神を横切り、さらに歩いて湯島天神へ。湯島天神の男坂(天神石坂)下に、国学者の平田篤胤が住んでいたのだ。 篤胤が…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる2.[東京駅 浜口雄幸遭難現場]

さて、羽田空港に到着したらモノレールで浜松町まで移動。私が羽田空港を使う理由の一つが、モノレールに乗れることだ。普段乗る機会がないのでワクワクするし、窓からの景色がよい。浜松町からはJRで御茶ノ水を目指す。途中、東京駅で乗り換え。その時ハ…

明治大正テロリズムの残滓を訪ねる1.[超国家主義の足跡]

緊急事態宣言が明けた10月、久しぶりに関東を訪ねた。今回の行き先は東京の本郷と山梨県甲府。本郷に行こうと思ったのは、まだ東大の赤門を見たことがないからという単純な理由だったが、実にみどころの多い街だ。一つには、菊坂界隈を中心にたくさんの文士…

サマーフィルムにのって

キノシネマ天神で、松本壮史監督の「サマーフィルムにのって」を鑑賞。さえない高校生たちのなんてことない学校生活を描いたゆるいコメディと思いきや、これがラスト15分で度肝を抜かれる傑作だった。 主人公のハダシは時代劇をこよなく愛する高校生だ。学校…

浜の朝日の嘘つきどもと

キノシネマ天神で、タナダユキ監督の「浜の朝日の嘘つきどもと」を鑑賞。主演の高畑充希が好きなので観に行ったのだけど、これが予想以上にいい映画だった。 物語の舞台は福島。高畑演じる主人公の浜野あさひは、父親が福島原発事故の除染作業に赴く作業員を…

サムジンカンンパニー1995

KBCシネマで、イ・ジョンピル監督の「サムジンカンンパニー1995」を鑑賞。1995年のソウルを舞台に、大企業で働く女性社員たちが力を合わせて自社の不正を暴いていく物語だ。彼女たちが立ち向かう不正は二つ。一つは工場排水による深刻な水質汚染であり、…

広島旅行[広島陸軍被服支廠]

所用にて、広島に行く機会があった。当日の天気はあいにく雨。遠出にするには時間も中途半端。そこで、JR広島駅から路面電車一本で行け、電停からも近い広島陸軍被服支廠に行ってみることとした。 被服廠とは兵士が身につける軍服、軍帽などを生産・保管す…

コントラ

KBCシネマで、アンシュル・チョウハン監督の「コントラ KONTORA」を鑑賞。チョウハン監督は1986年北インド生まれ、2006年からアニメーターとして働き、2011年に東京に活動の場を移してアニメーターとして働く傍ら、映画の製作を続けている。 物語の舞台は…

大逆ツアー 鎌倉8.[いわさき(社会主義おでん)]

銀座をぶらりと歩いた後は有楽町へ。食堂「いわさき」が開いていないか、ちょっとのぞいてみようと思ったのだ。 いわさきは1920年に創業した老舗の食堂だ。創業時は有楽町のガード下に店舗をかまえており、日本初のガード下飲食店として知られている。 この…

大逆ツアー 鎌倉編7.[カフェーパウリスタ]

東京滞在最終日。少し早めにホテルをチェックアウトして、東京駅周辺をぶらりと歩いてみた。八重洲ブックセンターをのぞいて、銀座方面へ。 と、かの有名な「カフェーパウリスタ」を見つけた。 お店のホームページによると、カフェーパウリスタが銀座に開業…

大逆ツアー 鎌倉編6.[ぼたもち寺]

村木源次郎の墓に手を合わせた後、Kさんに案内されて鎌倉を歩いていると、気になる看板が目に入った。 「ぼたもち寺」 この寺の正式な名前は常栄寺。日蓮宗のお寺であり、ぼたもち寺の名前は日蓮に関係がある。 日蓮は1222(貞応元)年、安房国長狭郡(現・…

大逆ツアー 鎌倉編5.[村木源次郎の墓③]

村木源次郎の遺骨は現在、鎌倉の本覚寺にある長芝家の墓にある。本覚寺まではJR鎌倉駅から歩いて10分もかからない。まず、駅でKさんと待ち合わせ、花を買ってSさんと3人で本覚寺に向かった。 本覚寺の歴史は非常に古い。源頼朝が鎌倉幕府を開く際に、幕…

大逆ツアー 鎌倉編4.[村木源次郎の墓②]

私が敬愛する山川菊栄の「おんな二代の記」には、時々村木源次郎が登場する。例えば1916年、結核の療養のために菊栄が東京を離れた時のことだ。 「鎌倉へ移ったのは大みそかの日で、駅につくと、あらい紺がすりの筒袖の着物の、短い裾から長いスネを出した大…

大逆ツアー 鎌倉編3.[村木源次郎の墓①]

東京に1泊して翌日、JR阿佐ヶ谷駅で知人と待ち合わせて鎌倉に向かった。待ち合わせたのは2月に福岡を訪ねてこられ、伊藤野枝の故郷・今宿をご案内したSさんだ。鎌倉ではSさんと共通の知り合いであるKさんに、村木源次郎の墓に案内していただくことと…

大逆ツアー 鎌倉編2.[青鞜社発祥の地]

青鞜社の跡地は東京メトロ千代田線・千駄木駅から歩いて5分ほど。団子坂を少し登ったところにある。江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」でおなじみの団子坂だ。 女性たちによる文芸誌「青鞜」が発刊されたのは1911年9月1日。創刊者として平塚らいてうの名前が…

大逆ツアー 鎌倉編1.[都電荒川線ぶらり旅]

4月上旬、久しぶりに東京を訪問した。といっても、今回のメインの訪問先は鎌倉である。鎌倉にある村木源次郎の墓を訪ねるのだ。 村木は大杉栄、伊藤野枝の同志で二人の家に居候し、家事や育児をして活動を支えた人物である。あだ名は「ご隠居」。自身は肺結…