旅と映画

行ったところと観た映画の個人的な記録

映画

さよなら、中洲太洋

中洲太洋こと「太洋映画劇場」は、福岡市の繁華街・中洲で1946年から営業を続ける老舗の映画館だ。映画が娯楽の王様だった時代の雰囲気をそのまま残す、華やかな内装やふかふかのシートが心地いい。 私はこの劇場にはリバイバル上映を観に行くことが多かった…

「カラーパープル」

中洲太洋で、ブリッツ・バザウーレ監督の「カラーパープル」を鑑賞。ピューリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの小説が原作で、1985年にはスティーブン・スピルバーグ監督により映画化された。今回はスピルバーグが制作を務め、ミュージカル仕立てに…

「テルマ&ルイーズ」

KBCシネマで、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」を鑑賞。1991年に公開された、シスターフフッド映画の金字塔だ。 主婦のテルマとウェイトレスのルイーズが、週末のドライブ旅行に出る。抑圧的な夫のもとで自由な時間の少ないテルマは、女友だ…

「Firebird ファイアバード」

KBCシネマで、ペーテル・レバネ監督の「Firebird ファイアバード」を鑑賞。1970年代、旧ソ連占領下のエストニアを舞台に、男性同士の恋愛を描いた美しい作品だ。 主人公セルゲイは兵役中の青年だ。彼が服務している基地に、将校のロマンが配属されてくる…

「一月の声に歓びを刻め」

キノシネマ天神で、三島有紀子監督の「一月の声に歓びを刻め」を鑑賞。北海道・洞爺湖の中島、伊豆諸島の八丈島、大阪の堂島という3つの島を舞台にした、喪失と再生の物語だ。 中島のマキは幼い娘が性暴力の末に殺され、恐らくはそのために自分が男性である…

「マイ・ハート・パピー」

キノシネマ天神で、キム・ジュハン監督の「マイ・ハート・パピー」を鑑賞。兄弟同然に暮らしてきた愛犬を、ある事情から手放すことになった主人公が、いとことともに里親のもとを目指すが、その道中でなぜか犬の数がどんどん増えていく・・・という愉快なロード…

「ほかげ」

KBCシネマで、塚本晋也監督の「ほかげ」を鑑賞。塚本監督は、高校生の時に「鉄男」を観て以来、ずっと好きな監督だ。俳優としてもとても魅力的だと思う。要するに大ファン。その塚本監督が来福され、上映後のトークイベントに登壇するというので、それに…

「枯れ葉」

2024年最初の映画鑑賞は、KBCシネマにてアキ・カウリスマキ監督の「枯れ葉」。前作「希望のかなた」ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞するも、引退宣言をしたカウリスマキの6年ぶりの新作だ。 主人公はもう若くない男女二人。女性のアンサは物語が始まっ…

「福田村事件」

KBCシネマで、森達也監督の「福田村事件」を鑑賞。福田村事件とは、関東大震災の後、千葉県東葛飾郡福田村で起きた虐殺事件のことだ。讃岐から来た行商人の一行が、関東の人間にはなじみの薄い、聞きなれない方言で話していたために朝鮮人と間違えられ、…

「波紋」

キノシネマ天神で、荻上直子監督の「波紋」を鑑賞。荻上作品といえば、「かもめ食堂」や「トイレット」に代表されるような、何気ない日常生活を描いて観る人の心をほっこりさせる作風という印象が強い。同じようなものを期待して鑑賞すると、たじろぐかも知…

「ウーマン・トーキング 私たちの選択」

キノシネマ天神で、サラ・ポーリー監督の「ウーマン・トーキング 私たちの選択」を鑑賞。自給自足の生活を送るキリスト教一派の暮らす村で、不可解な事件が頻発する。女性が朝目を覚ますと身体にあざや傷があり、性器から出血しているというものだ。要するに…

「ラストエンペラー」

KBCシネマで、ベルナルド・ベルトリッチ監督の「ラストエンペラー」を鑑賞。言わずと知れたアカデミー賞作品賞ほか9部門を獲得した、1987年公開の名作。今年の1月にも「12ヶ月のシネマリレー」の一環としてリバイバル上映されたが、音楽を担当した坂本…

最近観た映画

ここ最近、少し多忙だったのと、1月2月は遠出をしていないためブログの更新が滞ってますが元気です。 松代大本営(象山地下壕跡)の訪問報告をしたり、青山(山川)菊栄と伊藤野枝の廃娼論争のざっくりした資料を作ったりしていました。 今年に入ってから…

「そばかす」

KBCシネマで、2022年最後の映画鑑賞。ものは玉田真也監督の「そばかす」だ。 名古屋のテレビ局メ~テレが企画した、自分らしく生きようとする女性たちを描く「(not)HEROINE movies」プロジェクトの二作目である。主人公の蘇畑佳純(そばたかすみ)を演…

「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」

キノシネマ天神で、ヴァディム・パールマン監督の「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」を鑑賞。物語は第二次世界大戦中、ドイツ兵に射殺されそうになったユダヤ人の青年・ジルが、とっさに「自分はペルシャ人だ」と嘘をついたことから始まる。兵士たちはジル…

「土を喰らう十二ヵ月」

中洲大洋で、中江裕司監督の「土を喰らう十二ヵ月」を鑑賞。水上勉の随筆が原案だ。妻に先立たれ、ひなびた山奥の農家で畑仕事をして暮らしている老作家のツトムを沢田研二、ツトムの担当編集者で年の離れた恋人の真知子を松たか子が演じている。 なんとも豊…

「マイ・ブロークン・マリコ」

キノシネマ天神で、タナダユキ監督の「マイ・ブロークン・マリコ」を鑑賞。 主人公のシイノトモヨは、ラーメン屋のテレビで見たニュースで、親友のイカガワマリコの死を知る。作中で明言はされないが、自殺と思われる。マリコは幼い頃から、性暴力を含む虐待…

「秘密の森の、その向こう」

KBCシネマで、セリーヌ・シアマ監督の「秘密の森の、その向こう」を鑑賞。前作「燃ゆる女の肖像」に引き続き、今回も女性たちの物語だ。 主人公のネリーは8歳の少女。おばあちゃんが亡くなったので、両親とともにおばあちゃんの家を片付けに来ている。し…

「アトランティス」

KBCシネマで、ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督の「アトランティス」を鑑賞。ヴァシャノヴィチ監督は1971年、ウクライナ生まれ。ドキュメンタリー映画を多く撮ってきたが、本作では2025年という近未来を舞台に「戦争が終わった後の世界」を描いている…

「戦争と女の顔」

KBCシネマで、カンテミール・バラーゴフ監督の「戦争と女の顔」を鑑賞。ノンフィクション作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが、第二次世界大戦の独ソ戦に従軍した女性たちの体験を聞き取った「戦争は女の顔をしていない」が原作だが、そのまま映像…

「ナワリヌイ」

KBCシネマで、ダニエル・ロアー監督の「ナワリヌイ」を鑑賞。ロシアの政治活動家アレクセイ・ナワリヌイを撮ったドキュメンタリーだ。 ナワリヌイは、プーチン政権を批判する反体制派として知られる人物だ。2020年8月、西シベリアのトムスクからモスクワ…

「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」

中洲大洋でチャン・イーモウ監督の「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」を鑑賞。舞台は1969年、文化大革命の渦中にある中国だ。主人公は強制労働所を脱走してきた男。造反派の恨みを買ったために強制労働所送りになり、妻や娘とは絶縁している。だが、「22号…

「ツユクサ」

キノシネマ天神で、平山秀幸監督の「ツユクサ」を鑑賞。とにかく出演している俳優陣がよい。主人公を小林聡美、彼女と恋に落ちる男性を松重豊、友人役に江口のりこ、平岩紙と個性と実力を兼ね備えたキャスティングで、これだけで観に行きたくなる。 伊豆半島…

「親愛なる同志たちへ」

KBCシネマで、アンドレイ・コンチャロフスキー監督の「親愛なる同志たちへ」を鑑賞。ロシアの地方都市ノヴォチェルカッスクで、1962年6月に実際に起きた軍による労働者の虐殺を描いた作品だ。実はこの映画、ロシア文化庁の製作である。公式サイトによる…

サマーフィルムにのって

キノシネマ天神で、松本壮史監督の「サマーフィルムにのって」を鑑賞。さえない高校生たちのなんてことない学校生活を描いたゆるいコメディと思いきや、これがラスト15分で度肝を抜かれる傑作だった。 主人公のハダシは時代劇をこよなく愛する高校生だ。学校…

浜の朝日の嘘つきどもと

キノシネマ天神で、タナダユキ監督の「浜の朝日の嘘つきどもと」を鑑賞。主演の高畑充希が好きなので観に行ったのだけど、これが予想以上にいい映画だった。 物語の舞台は福島。高畑演じる主人公の浜野あさひは、父親が福島原発事故の除染作業に赴く作業員を…

サムジンカンンパニー1995

KBCシネマで、イ・ジョンピル監督の「サムジンカンンパニー1995」を鑑賞。1995年のソウルを舞台に、大企業で働く女性社員たちが力を合わせて自社の不正を暴いていく物語だ。彼女たちが立ち向かう不正は二つ。一つは工場排水による深刻な水質汚染であり、…

コントラ

KBCシネマで、アンシュル・チョウハン監督の「コントラ KONTORA」を鑑賞。チョウハン監督は1986年北インド生まれ、2006年からアニメーターとして働き、2011年に東京に活動の場を移してアニメーターとして働く傍ら、映画の製作を続けている。 物語の舞台は…

春江水暖 ~しゅんこうすいだん

KBCシネマで、グー・シャオガン監督の「春江水暖 ~しゅんこうすいだん」を鑑賞。監督の故郷である浙江省杭州市富陽(フーヤン)を舞台に、ある大家族の春夏秋冬を描いた物語だ。キャストは一族の祖母と孫娘をのぞき、ほとんどがプロの俳優ではなく、実際…

ホモ・サピエンスの涙

KBCシネマで、ロイ・アンダーソン監督の「ホモ・サピエンスの涙」を鑑賞。好き嫌いのわかれる映画だろう。ストーリーらしいストーリーはなく、登場人物もバラバラ。日常の何気ない一コマを捉えたような断片的なシーンの積み重ねで構成されている。 例えば…