旅と映画

行ったところと観た映画の個人的な記録

つかこうへいVS映画 ~そこにつか芝居があった~

アジアフォーカス福岡国際映画祭、今年は日本映画特集「つかこうへいVS映画 ~そこにつか芝居があった~」と銘打ち、つかこうへい原作の映画4本を上映。その中から「寝取られ宗助」「蒲田行進曲」「熱海殺人事件」を鑑賞した。

若松孝二監督「寝取られ宗助」
ドサ周りの旅芸人一座の座長・宗助を原田芳雄、看板女優・レイ子を藤谷美和子が演じる。
宗助と事実上夫婦関係にありながら、次々と男を作ってはその度に出奔するレイ子と、それを責めないばかりか間男にトラックを買ってやったり、レイ子との温泉旅行に送り出してやったりする宗助。レイ子にしてみたら、その度量の大きさが嫌なのだろうなぁと思う。それでも、最後には必ず宗助のもとに帰ってきてしまう。
ストーリーとしてはシンプルで、要は二人が結婚するのかしないのか。その合間に座員の重病や父親との確執、若い女優の宗助へのほのかな恋心などがからむ。
劇中で原田芳雄が「越路吹雪の弟」に扮し、「愛の賛歌」を歌うシーンがあるが、おかしさと悲哀がじんわりにじむ絶唱
ところで、原田芳雄は出演作の中でよく酒を飲んでいる。本作の中でも日本酒を飲むシーンが何度か出てくるが、これが実にうまそうに見える。酒がうまい状況では全然ないのにうまそうで、沁みる。

深作欣二監督「蒲田行進曲

いわずと知れた大ヒット作。
銀ちゃんを演じる風間杜夫がすごくいい。普通に考えればエゴイストで自己愛ばかり強い、人騒がせな鼻持ちならない男なのに、何となく憎めない愛嬌があり、時に弱さと哀しみがにじむ。
これは小夏(松坂慶子)を巡る三角関係ではなく、銀ちゃんを巡る小夏とヤス(平田満)の三角関係。
芝居への深い愛をつかこうへいが脚本で描き、それを深作欣二が映画に結実させた傑作。

髙橋和男監督「熱海殺人事件
熱海殺人事件は、阿部寛が木村伝兵衛を演じた「熱海殺人事件 モンテカルロイリュージョン」を観たことがある。舞台の方を先に観ているので、余計にそう思うのかも知れないけれど、この映画に関しては、映画ならではの持ち味をあまり生かせていないように思う。
特にクライマックスの「大山次郎が山口アイ子を何故殺したのか」を激白するシーンは、舞台をそのまんまカメラで映したようにしか見えない。映画であれをやってしまっては、映画化する意味がないと思うのだけど・・・
仲代達矢風間杜夫志穂美悦子の共演は豪華。志穂美悦子のキリッとした美貌は、水野朋子役によくハマっている。
ただ、ラストの水野が乗った車をヘリコプターで追いかけるシーンは蛇足ではないか。二人が新幹線ジャックを追いかけるだけでよかったのに。