旅と映画

行ったところと観た映画の個人的な記録

皆さま、ごきげんよう

KBCシネマで、オタール・イオセリアーニ監督の「皆さま、ごきげんよう」を鑑賞。
不思議な映画である。まず、貴族が民衆によってギロチンにかけられるシーンから始まる。民衆、主に女性たちが、編み物をしながら楽しい見世物でも見るように処刑を見守っている。場面が変わると、次はどこかの戦争のシーン。兵士たちが民家に押し入り、放火して家具や財産を略奪し、女性をレイプする。一方で略奪したピアノを奏で、その演奏にしんみりと聴き入ったりする。
さらに場面は変わって現代となる。ホームレスが警察官によって暴力的に排除され、それに反対する市民は拘束され連行される。
かといって、ホームレスの排除に反対する物語ではない。これといった、はっきりとしたストーリーはない。アパートの管理人と人類学者、この二人の初老の男が主人公のようだ。彼らを取り巻く、少し風変わりな人々が出てくる。
短いいくつものエピソードから構成されており、何か大きな事件が起きるわけではない。(小さな事件はたまに起きる)
一見、平凡な何気ない日常のようで、ドキリとするできごとが起きる。排除されたホームレスのように、疎外される人がいる。小さな暴力もある。だが、どことなくユーモラスである。
この映画の原題は「CHANTD’HIVER(冬の歌)」。
監督へのインタビューによると、グルジア地方の古い歌から取ったそうだ。その歌詞はこうだ。
「冬が来た。空は曇り、花はしおれる。それでも歌を歌ったっていいじゃないか」

私もそのような気持ちでありたい。