旅と映画

行ったところと観た映画の個人的な記録

さよなら、中洲太洋

 中洲太洋こと「太洋映画劇場」は、福岡市の繁華街・中洲で1946年から営業を続ける老舗の映画館だ。映画が娯楽の王様だった時代の雰囲気をそのまま残す、華やかな内装やふかふかのシートが心地いい。

 私はこの劇場にはリバイバル上映を観に行くことが多かった。「犬神家の一族」「蘇る金狼」「Wの悲劇」などの角川映画、「ブレードランナー」「モスラ」「未来世紀ブラジル」・・・

 その中洲太洋が2024年3月31日で、閉館することとなった。主な理由は建物の老朽化だ。閉館後、建物は解体されるという。再開については未定。

 家にいながらにして、ネット配信で観たい映画が自由に観られる時代。わざわざ上映時間を調べ、映画館まで足を運び、配信サイト1ヶ月分くらいの料金を払って映画を観るのは、手間のかかることなのかも知れない。それでも、手間をかけてこその贅沢というものもある。クラシカルな中洲太洋は、とりわけ贅沢な場所だった。もうあの空間で映画を観られないことがとても寂しい。そしてなくなってほしくない場所については、日ごろから意識的に残す努力をすることが大切なのだと考えたりしている。なくなることが決まってからあがいても間に合わない。