旅と映画

行ったところと観た映画の個人的な記録

「枯れ葉」

 

 2024年最初の映画鑑賞は、KBCシネマにてアキ・カウリスマキ監督の「枯れ葉」。前作「希望のかなたベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞するも、引退宣言をしたカウリスマキの6年ぶりの新作だ。

 主人公はもう若くない男女二人。女性のアンサは物語が始まって間もなく勤め先のスーパーをクビになり、男性のホラッパはアルコール依存症だ。そんな二人が偶然に出会い、ひかれあっていくのだが、中盤まで二人は互いの名前さえ知らない。せっかくもらったアンサの電話番号のメモもすぐなくしてしまう。やっと距離が縮まったと思ったら、ホラッパのアルコール依存が原因で仲たがいをしてしまう。とにかく延々とすれ違い続けるのだが、カウリスマキらしいユーモアがにじみ、ヤキモキせずに鑑賞できる。監督の愛犬・チャップリンの愛らしい姿にも心がなごむ。

 ところで、作中にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻のニュースが度々流れる。ラジオをつける場面が何度もあるが、ほぼその度に流れ、しかも病院や商業施設が爆撃されて民間人が多数亡くなったというようなニュースだ。

 この映画の公式サイトに、カウリスマキ監督は次のようなメッセージを寄せている。

 「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で」

 「枯れ葉」に込められたものは、反戦の思いだったのだ。これはカウリスマキ監督による反戦映画である。