旅と映画

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追悼する人々と百年目の東京2.[今年のそよ風]

 そよ風のことはこれまでにも繰り返し投稿をしてきたので今さら感があるが、正式名称は「日本女性の会 そよ風」という。

 会のHPによると、「偏向報道でマスコミが伝えていない真実など知って危機を感じて」「こういう世の中でもあきらめずに正しい事を主張し、日本が悪くならないように」「一人でチラシを作りポスティングしている方や一人で抗議に参加している女性が集まって出来た会」である。活動の主体はあくまで女性だ。2023年10月現在、高知県を除く全ての都道府県に支部があり、会員がいる。その数およそ580人で、「そよ風支援隊」と呼ばれる男性の準会員も300人あまりいる。

 そよ風の特徴は、とにかく行動的であるということに尽きるのではないか。もともと一人でもチラシのポスティングをしたり、抗議行動に参加したりしていた、アクティブな女性たちの集まりである。小池百合子都知事朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送付するのを取りやめた2017年以降、追悼式典に露骨な妨害をしかけてくるようになった。  追悼式典が行われている都立横網町公園には、関東大震災時の火災で町民約8千人の内、実に7千人が亡くなった悲劇を悼む「石原町遭難者碑」がある。この碑の前で、朝鮮人犠牲者追悼式典が行われている時間帯に合わせて、そよ風も「真実の 関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」を行うようになったのである。

 別の碑の前で慰霊祭を行うことの何が問題なのかと思われるかも知れない。問題はその「慰霊祭」の中身である。そよ風のブログに上がっている報告や動画を確認すると、石原町で亡くなった人々を悼むとうたっておきながら、実際には冒頭で少し触れられるのみ。参加者のスピーチの大半は朝鮮人虐殺はデタラメであり、日本人は汚名を着せられているといった内容だ。しかも、スピーカーを「外」に向けてそれらの発言を行っており、近くで行っている朝鮮人犠牲者追悼式典の参加者にそれを聞かせようという意図が明らかだ。

 「慰霊祭」の中でのこうした言動は、2020年8月、東京都総務局人権部によりヘイトスピーチであると認定された。のみならず、人権部は「当該発言がなされた日時、場所、その他の様態等に照らせば、別の集会に対して挑発的意図をもって発せられたもの」とまで断じている。  しかし、その後も追悼式典への妨害は執拗に計画された。去年2022年は震災時の東京市長でその後の復興に力を注いだ、永田秀次郎記念句碑を見学するとの口実で、追悼式典参加者に嫌がらせをしようとしたのである。永田秀次郎の句碑は、朝鮮人犠牲者追悼碑のすぐ隣、わずか数メートルしか離れていない位置にあるのだ。  そよ風側の目論見としては、追悼式典が行われている最中にすぐ近くをウロウロと歩き回り、ヤジを飛ばすなどするつもりだったのだろう。どうしたらこんな陰湿、かつ幼稚なことを思いつくのかと、あきれるほかない。

 だが、その目論見は見事に粉砕された。公園を管理する東京都建設局が、当日、句碑の周りにバリケードを設置したのである。しかも見学は「一人3分」との規制までついた。さすがにこれでは嫌がらせは行えない。

 もういい加減にあきらめたらどうなのかと思うが、彼女たちはあきらめなかった。今年はより直接的な行動に出たのである。それが朝鮮人犠牲者追悼碑の前で「慰霊祭」を行うという暴挙だった。

 

そよ風に関する過去記事(2020年9月)

9月1日を東京で過ごす2.[そよ風という団体]

9月1日を東京で過ごす3.[追悼する人々の反撃]

9月1日を東京で過ごす4.[9月1日の横網町公園]

そよ風に関する過去記事(2022年9月)

今年も9月1日を東京で過ごす2.[朝鮮人犠牲者追悼式典①]

今年も9月1日を東京で過ごす3.[朝鮮人犠牲者追悼式典②]