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今年も9月1日を東京で過ごす3.[朝鮮人犠牲者追悼式典②]

 関東大震災から99年目となる2022年、東京都立横網町公園朝鮮人犠牲者追悼式典が行われた。2020年、21年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、規模を縮小しオンラインで配信するなどの方法で行われたので、通常通りの開催は2年ぶりとなる。式典が始まる直前に強い雨が降り、非常に蒸し暑い中での開催となったが、韓国・ハンギョレ新聞の記事によると約300名が参列をした。

 

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 腹立たしいことであるが、朝鮮人虐殺の事実を否定する、歴史修正主義者たちの集会も同時に行われた。関東大震災石原町犠牲者慰霊祭実行委員会の主催で行われる「真実の関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」と称する集会で、共催には「日本女性の会 そよ風」も名を連ねている。2017年から行われているものだが、慰霊祭とは名ばかりで追悼式典を妨害するのが目的であることは、そよ風のブログを見ても明らかだ。自分たちの「慰霊祭」の報告はおざなりで、追悼式典のことばかりを執拗にあげつらい、参列者の顔写真をさらしている。卑劣である。

 今年は「慰霊祭」に加え、永田秀次郎氏記念句碑の見学を行うという。永田秀次郎氏記念句碑とは、関東大震災時の東京市長で救護活動を指揮するとともに、その後の東京の復興に力を注いだ永田秀次郎の業績を讃える碑のことだ。「焼けて直ぐ 芽ぐむちからや 棕梠の露」という句が刻まれている。

 この碑を「東京復興を成し遂げた偉人や先祖達の血の滲むような努力への感謝と顕彰」のために、「慰霊祭」の後に見学をするという。だが、この句碑は朝鮮人犠牲者追悼碑のすぐ隣、数メートルしか離れていないのである。追悼式典が行われている真横を、虐殺を否定する「慰霊祭」の参加者がウロウロと歩き回るということだ。これが嫌がらせ、挑発行為でなくて何だというのか。

 当日、句碑はバリケードで厳重に囲まれていた。公園を管理する東京都建設局がトラブルを懸念し、設置したものだ。さらに見学の際は3人一組で3分ずつと規制された。そよ風側の目論見ははずれ、追悼式典に対する露骨な妨害行為はなかったが、見学の申請があった時点でもう少し何か対応はできなかったのだろうか。そよ風らの「慰霊祭」については、参加者の言動がヘイトスピーチにあたると、東京都総務局人権部も認定している。

 

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公園の外に壁を作る警察官。この向こうで、そよ風らの「慰霊祭」が行われている。

 

 追悼式典自体は今年も厳粛に行われ、多くの人々が犠牲者を悼んだ。実行委員長の宮川泰彦氏は「悲惨な歴史的事実を忘れずに伝えていくことが、今を生きている私たちの責務だ」と追悼の辞を述べたが、深く共感する。

 

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